感想

【感想】ほしおさなえ『言葉の園のお菓子番』|言葉を紡ぐ人たちのあたたかさ

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『言葉の園のお菓子番』は、ほしおさなえさんのシリーズ作品のひとつ。

「連句」という、ちょっと珍しいテーマの小説です。

「お菓子番」っていったい何のことだろう?と興味を持ったのがきっかけで手に取りました。

  • 仕事や生き方になんとなく疑問や不安を抱えている人
  • 短歌などの言葉遊びに興味がある人
  • ほっこりと心あたたまる小説が読みたい人

『言葉の園のお菓子番』シリーズは、こんな人におすすめの作品です。

本の概要

タイトル: 言葉の園のお菓子番 見えない花
発行: 大和書房
著者: ほしおさなえ

ざっくりあらすじ

『言葉の園のお菓子番』は、主人公の一葉が、祖母の春子の遺品から連句のノートを見つけたことから始まります。
書店員の職を失った一葉は、連句の会「ひとつばたご」に参加し、季節のお菓子を持って連句会に通い始めます。
かつて「ひとつばたごのお菓子番」と名乗っていた祖母の役割を引き継いで。
連句会のメンバーと共に、言葉を紡ぎながら、自分の過去と向き合い、新たな一歩を踏み出す物語です。

『言葉の園のお菓子番』はシリーズもので、現在5巻まで発売されています。

  1. 『言葉の園のお菓子番 見えない花』
  2. 『言葉の園のお菓子番 孤独な月』
  3. 『言葉の園のお菓子番 森に行く夢』
  4. 『言葉の園のお菓子番~復活祭の卵』
  5. 『言葉の園のお菓子番 未来への手紙』

「連句」がテーマということで、「楽しめるのかな?」と不安でしたが、読んでみると、独特の言葉遊びの世界にどんどん引き込まれていきました。

言葉のもつ美しさと、言葉を紡ぐ人たちのあたたかさを感じることができる作品です。

「変化しながら前へ進み、後ろには戻らない」。

これは連句のルールであり、本書で描かれている人の生き方そのものでもあります。

連句を通じて、人と人とのつながりを思い出させてくれる作品です。

この作品は、Audibleの聴き放題対象です。

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本書の面白いポイント

この本の面白かったポイントを紹介します。

面白かったポイント① 全然知らないはずの連句が楽しい

連句」というものを、この本を読むまでほとんど知りませんでした。

短歌を繋げていくものだよね、という程度の知識です。

この程度の知識で楽しめるのだろうか、と心配していたのですが、読んでいくとそんな不安はなくなりました。

主人公の一葉もほとんど連句を知らない状態で、連句会「ひとつばたご」に参加します。

連句のルールはたくさんありますが、一葉が「ひとつばたご」の人々と一緒に連句を巻く(連句をすることを「連句を巻く」と言うようです)うちに、少しずつルールと楽しさがわかってきます。

短歌や俳句は歌集を読んだりするくらいには好きなのですが、連句はまた別の面白さがあるなと感じました。

細かなルールがたくさんある連句ですが、作品を読んでいくと少しずつ「次は確かこういう句が必要で…」とわかるようになってきます。

たくさんのルールがあるからこそ、表現された句は洗練されていて、情景や込められた思いをしっかりと伝えてくれます。

読み進めながら、主人公の一葉と一緒に連句の世界にははまっていきました。

面白かったポイント② 人とのつながりのあたたかさ

主人公の一葉は、勤めていた書店の閉店に伴って職を失い、実家に戻ってきます。

たまたまそのタイミングで亡き祖母が連句のノートに遺していた、「お菓子を持って連句会に行ってほしい」というメッセージを見つけ、そこから一葉の、「ひとつばたご」の人々との交流が始まります。

連句会に集う人々は、祖母よりも少し若い世代から、一葉よりも下の大学生まで幅広い。

複数の世代が集う場って、仕事以外でなかなかありませんよね。

最初はお菓子を届けたらそれでおしまいのつもりでしたが、「ひとつばたご」の人々との交流を深めていくうちに、彼女は自分でも気づかなかった、新しい仕事のチャンスにも出会うことができます。

それは、もともと持っていたものを、新しい視点で見つめなおすことで生まれたチャンスです。

連句というテーマとの絡め方がうまいな、と感じたポイントです。

様々な人がいる、色々な人が句を読む、それが連なって、一つの作品になる。

連句の面白さは、人とのつながりの面白さでもあると感じさせてくれます。

作中で何度も、「連句は森羅万象を描くものだから、常に変化しながら前へ進み、後ろには戻らない」と強調されています。

それは決して、がむしゃらで派手な前進ではありません。

ひとつ前の句とはつながっているけれど、更にひとつ前の句とは重ならない。

少しずつの変化。

けれど、着実な前進。

本来わかることのできない他人の言葉を読み解きながら、少しずつ自分の世界を広げていくこと。

自分にできること、自分にしかできないこと。それを見つけて世界を広げてくれるのは、案外、自分以外の誰かなのかもしれません。

この作品で書かれている連句は、人の生き方そのものも表しているように感じました。

面白かったポイント③ お菓子に込められた思い出

「お菓子番」というタイトルに偽りなく、作品には季節ごとのお菓子が登場します。

お菓子なのでおいしそうに描かれていますが、特に大切なのは、そのお菓子にまつわる思い出です。

「ひとつばたごのお菓子番」としてお菓子を届けていた一葉の祖母、春子の思い出。

もういない人のことを、直接思い出すのは難しいです。

でも、例えば桜を見れば一緒にお花見をした時のことを思い出すし、お菓子を食べれば、そういえばこのお菓子を好きだった人がいたなと思い出すこともあります。

ほんのり優しくて、すこしだけ切なくなる記憶。

この作品に描かれているお菓子には、そういった思いが込められていると感じます。

まとめ

『言葉の園のお菓子番』は、言葉の力と人とのつながりの大切さを感じさせてくれる物語です。

ちょっと珍しい連句と、お菓子という組み合わせが、読者に新鮮な面白さと、ほんのりと心あたたまる感動を与えてくれます。

一葉が連句を通じて自身を見つめ直し、新しい人々との関わりを築いていく姿は、悩みや不安を持つ人の共感を呼び、今より少しだけ前へ進もうという気持ちを持たせてくれます。

また、連句会のメンバーそれぞれのキャラクターが個性的で、彼らのやり取りが物語をさらに魅力的にしています。

言葉の美しさと心あたたまるストーリーで癒されたい、という人におすすめの作品です。

また現在、以下の作品がAmazonオーディブルの聴き放題対象作品となっています。

  1. 『言葉の園のお菓子番 見えない花』聴き放題対象作品
  2. 『言葉の園のお菓子番 孤独な月』聴き放題対象作品
  3. 『言葉の園のお菓子番 森に行く夢』聴き放題対象作品
  4. 『言葉の園のお菓子番~復活祭の卵』聴き放題対象作品
  5. 『言葉の園のお菓子番 未来への手紙』2024年10月配信予定

ちょっと気になるな、という人は、『言葉の園のお菓子番 見えない花』をお試しで聴いてみてください。

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この本を読んだ人におすすめする次の本

『言葉の園のお菓子番』を楽しんだ人には、同じくほしおさなえさんの『活版印刷三日月堂』シリーズをおすすめします。

この本もまた、「活版印刷」という少し珍しいテーマを扱っていて、活版印刷と言葉を通じた、人々の交流が優しく描かれている作品です。

本編4巻、番外編2巻の計6巻刊行されています。

『活版印刷三日月堂 星たちの栞』

読んでいて心が温かくなる作品なので、気になる人はチェックしてみてください。

  • この記事を書いた人

ほんの

「ほんのりぼん」の運営|0歳児育児中|本好きで年間約100冊読書|おすすめの小説や自己啓発書などを紹介|今より少しだけ豊かな生活を手に入れる読書の方法を発信しています。

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