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【感想】原浩『火喰鳥を、喰う』|「お前の死は私の生」死者の日記から全ての異変は始まった【ネタバレ】

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2025年10月に映画化が決定した『火喰鳥を、喰う』

戦時中に亡くなった大叔父の日記が発見されたことをきっかけに、主人公の周囲に異変が起き始めます。

この異変は「怪異」の仕業なのか、あるいは人間が起こした「事件」なのか。

じわじわと日常が侵蝕されていく恐怖を感じながら、主人公たちは原因を探っていきます。

表紙の鳥のインパクトが強すぎて、ホラーが苦手なのに手に取ってしまいました。

話が進むにつれて、じわじわ怖くなってくるタイプのホラー。

ラストで「そういうことだったのか…!」と思わず唸る、ミステリー要素も入っています。

ポイント

  • じわじわ忍び寄るタイプのホラーが好きな人
  • 怪異×ミステリーが好きな人
  • 人間の怖さが垣間見えるストーリーが好きな人

日常が侵蝕されていく恐怖を、ぜひ味わってください。

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あらすじ

ざっくりあらすじ

久喜雄司(くき・ゆうじ)に起きた二つの出来事。
ひとつは久喜家の墓石が、何者かによって破壊されたこと。もうひとつは、死者の日記が届いたこと。
久喜家に届けられた日記は、太平洋戦争末期に戦死した雄司の大伯父・久喜貞市(さだいち)の遺品で、そこには異様なほどの生への執着が記されていた。そして日記が届いた日を境に、久喜家の周辺では不可解な出来事が起こり始める。
貞市と共に従軍し戦後復員した藤村が死に、日記を発見した新聞記者は発狂し、雄司の祖父・保(たもつ)が失踪。
そして日記には、誰も書いた覚えのない文章が出現する。
「ヒクイドリヲクウ ビミナリ」
雄司は妻の夕里子とともに超常現象に詳しい北斗総一郎(ほくと・そういちろう)に頼ることにするが……。

墓石が壊され、死者の日記が届いたことで、久喜家の周辺で徐々に不穏な出来事が起き始めます。

まるで現実が、貞市が生きている世界に書き替えられていくかのように。

全ての現象は、生に異常なほどの執着を見せていた、貞市の日記が原因なのか?

少しずつ現実を侵蝕されていく様子に恐怖します。

感想と考察

『火喰鳥を、喰う』の感想と考察をまとめていきます。

ネタバレを含む感想のため、注意してください。

感想:世界が書き替えられていく恐怖

本書は、ドーン!と驚かせるタイプのホラー小説ではありません。

読んでいる間中、姿の見えない何かにずっと追いかけられているような気持ちで、どうかつかまりませんように、と願いながら読んでいました。

追いつかれてしまったら「終わってしまう」とわかる感じ。

終盤になるにつれ、追いかけてくる速度がどんどん上がっていくようで、逃げ切ってと祈るように読み進めるしかない。

けれど結局最後には追いつかれ、敗北してしまいます。

私は頭のどこかで、「主人公だからなんとかなるんじゃない?」と思っていました。

追い詰められても「何か逆転の方法があるでしょ?大丈夫でしょ!?」と言い聞かせながら読み続けたラスト。

こんなことになるって誰が思う?

絶望感と恐怖で何も言えなくなってしまいました……

考察①:日記がもたらした異変の正体は?

主人公たちの周囲に起きた異変は、ざっくり言うと「パラレルワールドの侵蝕」だと考えられます。

パラレルワールドとは、「もしかしたら〇〇だったかもしれない世界」のこと。

本作の場合、「久喜貞市が戦争で生き残った世界」が、実際の歴史とは違うパラレルワールド。

全ての異変は、パラレルワールドのはずの「貞市が生きている世界」を「正しい世界」にするために起きています。

日記に関わった人に異変が起きたのは、「貞市が生きている世界」に作り変えるため、邪魔な関係者が「存在しなかった」ことにされているのです。

「生きたい」という貞市の強い執着が残された日記が、この現象を起こしているようです。

考察②:「火喰鳥を喰う」とはどういうことか?

貞市の日記に現れた言葉「ヒクイドリヲクウ ビミナリ」とは、一体何を意味しているのでしょうか?

これは貞市が生き残るためのターニングポイントになる言葉ではないかと思います。

ヒクイドリは実際に存在する鳥で、作中で貞市が潜入したジャングルにもいたと書かれています。

日記の中で貞市は「ヒクイドリを捕らえて食べることができたら…」と言うような内容を書いていて、食料としてみていたことがわかります。

本来の世界では、彼はヒクイドリを食べることなく死んでしまったことになっています。

貞市が生き残る世界を作るためには、「貞一がヒクイドリを食べた」と言う事実が必要だったから、日記に「ヒクイドリヲクウ」と言う記述が現れたと考えられます。

さらに踏み込むと、日記に書かれたヒクイドリとは、鳥のヒクイドリではない可能性があると考えられます。

「火喰鳥を喰う」とは「人を喰らう」と言う意味なのではないでしょうか。

ここからは私の想像も交えた考察になります。

まず、本来の歴史において、「貞市は部下に殺されて食われたのではないか?」と考えました。

これは、かつて貞市の部下だった藤村老人が、異変により無惨な死に方をしたことからの想像です。

過去のシーンで藤村は直接手を下していませんが、貞市が敵兵に見つかるのを積極的に救出しようともしていません。

貞市が敵兵に殺されたのか、藤村が戻った時点で息があったかは定かではありませんが、藤村は貞市を「食料」とみなしたのではないか、と考えました。

藤村は「ヒクイドリ=貞市を喰らい生き延びた」、それによって「貞市が死んだ」のが本来の歴史で起きたこと。

だからこそ、「貞市が生きている世界」を作るために藤村は死ななければいけなかったのではないでしょうか。

藤村が火事で焼け死んだことも、「調理のために焼いた」過去をなぞっていると考えると、辻褄が合うのでは。

つまり、「パラレルワールドの貞市は、部下を殺して食べることで生き延びた」と私は考えました。

本来の歴史で起きたことが反転したため、藤村は殺され、貞市はその肉を喰らうことで生き延びた。

「火喰鳥を喰う」ことは「生=他人を犠牲にして生き延びること」の象徴として描かれているように感じます。

表紙の火喰鳥は、「パラレルワールドが本来の歴史を喰らおうとしている様子」を表しているとも考えられますね。

まとめ

『火喰鳥を、喰う』は、第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞・大賞を受賞した原浩さんのデビュー作。

デビュー作でこのクオリティってすごい!

生への執着が引き起こす、じわじわと日常を侵蝕していく恐怖を感じられます。

ホラー好きはもちろん、「なぜこんなことが起こるのか?」と言うミステリー的な考察要素もあるので、考察できるタイプの物語が好きと言う人も楽しめる作品です。

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  • この記事を書いた人

ほんの

「ほんのりぼん」の運営|1歳児育児中|読書サブスク活用で1年間に300冊読む|オーディブルのおすすめ本を中心に紹介|

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